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もうずっと、眠り続けている。いつからそうしていたのか、すっかり思い出せないのだけれど、いつからか、私はそうしている。
私の躰は、私の知らぬ誰かが、動かしてくれている。きっと、おばけのようなものだと思う。
おばけが、どういう理由で私の中にいて、何のために私を操っているのか、私は全く知らない。でも、そんなことは、私にとっては瑣末ごとに過ぎないのだ。
私は、ただ眠りたかった。そしておばけは、私を眠らせてくれている。私にとって、今このときは、ただそれだけでよかった。
私のなかのおばけが、歯を磨いている。顔を洗っている。私は、ゆっくりと視界を閉じて、まどろんだ。風景が滲む。何度目とも分からぬ眠りが、降り注いでくる。
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