top of page
君を憶う

 僕が白河園香と出会ったのは今から3年前、高校入学のときだった。中学まではそれぞれ別の学校だったが、高校に入学し、同じクラスになり、そこで彼女と出会った。五十音順で僕と苗字が近かったから、園香は僕の目の前の席にいた。
 高校生活が始まり、入学直後につきものの自己紹介の時間となった。それぞれ思い思いの自己紹介をするが、これだけの人数がいて、誰も知らないとなると、自己紹介も右から左へあっさり抜けてしまう。
 順番が回ってきて園香の順になり自己紹介が始まったが、正直何を話していたかは覚えていない。昔のことだし普通に忘れているとは思うが、そもそも最初から覚える気がなかったので、あの日の自分に聞いても思い出せないと思う。でも彼女の元気で活発そうな笑顔は印象的で、今でも思い出せる。その顔に僕は見とれていた。
「――くん。城山くん!」
「あっ、はい!」
 先生に名前を呼ばれたことに気付くのも遅れるぐらいの完全に一目惚れだった。
「城山理久です。僕は――」
 僕は当たり障りのない自己紹介を終えて自分の席に戻った。前を見ると園香の後ろ姿が目に入った。
(この席だと白河さんの顔があまり見られないな……。横の席ならよかったのに)
 このときは自分の苗字を恨んでいたが、贅沢な悩みだ。前後の席なのでプリントを配るときにはこちらを振り向くし、近い席だということを考えても全然悪い席ではないのだ。
 高校生活スタートの時点から、僕の脳内は園香のことでいっぱいだった。

bottom of page