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君を憶う

 同じクラスで席が前後だったのに、園香と話す機会はなかなかすぐには訪れなかった。
 そんなある日、週番が順番で巡ってきたのだが、これまたちょうど五十音順だったことから、園香と一緒に担当することになった。僕は手のひらを返して自分の苗字に感謝していた。
「城山くん。1週間一緒に頑張ろうね!」
 僕は静かにうなずくだけだった。嬉しい気持ちがバレるのが恥ずかしかっただけだが、それが園香の目にそっけなく映っていないか心配だった。

 その1週間はあっという間に過ぎ去ったように感じた。
(白河さんと一緒なら何週間でも週番をやってもいい)
 なんてことを当時は考えていたような気がする。さすがにそれはどうかと思う。
 それがきっかけとなり、僕は園香と話す機会が増えた。互いに授業のわからなかったところを教え合ったり、他愛のない雑談をしたり。席配置もよかったのだろう。

 時は流れて夏休みに入る前、僕は園香に告白をした。
「うん、私も城山くんと一緒にいて楽しいし、まずは友達から始めよっか。……って、それだと今と変わらないかな?」
 園香の返答を聞いて僕たちは互いに笑い合った。何はともあれ、園香との距離が少し近付いた。

 夏休みに入ってからも僕は園香と何度か会って遊んでいた。高校生だし、お金は親からのお小遣いだけだし、できることは限られていたけれど、それでも僕たちは2人の時間を楽しんでいた。

 夏休みが明けて秋になった。僕と園香は一緒にいることが多かったし、次第に僕たちが付き合っていることは周知の事実となった。学校行事や、休日のデートや、楽しいことはたくさんあった。時々喧嘩をすることもあったけれどすぐに仲直りをした。

 季節は巡って1年が経ち、高校2年生になった。クラス替えとなったが、園香とは引き続き同じクラスだった。
「今年も1年よろしくね、りっくん」
「よろしく、園香」
 学年が変わっても楽しい日々が続くものだと、このときの僕たちは信じていた。

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