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君を憶う

「――様。お客様?」
 長い回想に耽っていたら、急に声が聞こえてきて現実に引き戻された。さっきの店員だ。
「あ、すみません……」
「いえ、苦しそうにされていたもので。追加の注文はございますか?」
「そうしたら、コーヒーをもう一杯とチョコレートケーキを一つ」
「かしこまりました」
 僕は追加注文した。半分眠っていたのかもしれない。コーヒー一杯で粘る客だと思われたら嫌なので、ケーキも付けておいた。元の身体ではあまり甘いものは好きではなかったのだけど、園香は甘党ということもあり、僕がこの身体になってからは完全に園香の味覚に動かされている。実際食べるとおいしいと感じるのだから、人によって味覚は違うものなんだと認識させられる。
 ケーキを食べ終え、おかわりのコーヒーを飲み干して少し落ち着いたところで、会計を済ませて店を出た。

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