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君を憶う

 朝になり、僕は目をゆっくりと開いた。見慣れた園香の部屋の天井だ。ゆっくりと身体を起こすと、目に溜まっていた涙が流れだした。
「……やっぱり夢だったのかな」
 そう発した声はいつもの園香のものへと戻っていた。
 目が冴えてきたところでさっきの夢(?)を思い返していると、あることに気付いた。
「園香の記憶が……ある? 記憶が読める……?」
 園香が生きていた頃の記憶が呼び起こせるようになっていた。と言っても別に僕は僕で変わらない。ただ高校2年生までの記憶が2人分並行して存在しているような状態だ。それはそれで不思議だけど、だからと言って心まで園香になったというわけではない。僕は僕のままで、園香の記憶も保持しているだけだ。園香としての想い出、そのときの感情など、全部というわけではないけれど、強く印象的なものが、僕の中にもあるという状態と表現すればいいだろうか。
 そして園香が僕のことをとても好きでいてくれていたことも、その感情も僕の中に流れている。
「僕を好きになってくれてありがとう、園香」

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